【中国よもやま話】話題のアパレルEC「SHEIN」、中国企業って本当ですか?

2022.12.7
  • 東京・原宿に11月13日、アパレルEC「SHEIN(シーイン)」の常設ショールームがオープンし、大きな話題を呼んでいます。SHEINは圧倒的な価格競争力を武器にコロナ禍の米国で人気を高め、ファストファッションの「ZARA」「H&M」を凌駕する勢いで成長しているブランドです。

    SHEIN TOKYO

     

    店舗はなくECだけで販売するビジネスモデルですが、今年10月に期間限定のポップアップストアを大阪に出店したことで日本でも注目され始め、原宿に商品を展示、オンラインで購入できるショールームができたことで、連日メディアでも取り上げられるようになりました。 

    SHEIN OSAKA POP UP

     

    ところで一つ気になることがあります。SHEINはプレスリリースなどで「​150以上の国と地域でサービスを展開するグローバルファッションブランド」と紹介していますが、多くのメディアはSHEINを「中国発アパレルEC」を説明しています。一体どういうことでしょうか。

     

    広州市にサプライチェーン集約して急成長

    SHEINの前身企業は2008年に中国・南京市で設立されました。当時20代前半だった創業者の許仰天(クリス・シュー)氏は、検索エンジンのSEO対策の仕事をする中で、中国で生産したウェディングドレスが米国で数十倍の価格で売られていることを知り、「金融危機をきっかけに、米国では安価なアパレル商品に対する需要がより大きくなる」と考えたそうです。

     

    当初はウェディングドレスのECを行っていましたが、徐々に若い女性向けのアパレルにシフト。2012~2013年には現在のビジネスモデルの原型が固まりました。

    SHEINは当時、広州のアパレル卸売市場で売られている商品の画像をサイトに掲載し、注文が入ったら買い付ける手法を取っていたようですが、注文の増加に伴い、シュー氏は2014年ごろ、拠点を広州市に移し自社のサプライチェーンを構築することを決意しました。

     

    広州市には大小の縫製工場がひしめきあっており、SHEINは他社より良い条件を提示して「低ロット・短納期」で生産してくれる縫製工場を開拓していきます。

    SHEINの強みは「デザインから販売まで最短1週間、毎日1000点以上の新商品納入」「圧倒的な安さ」「Z世代に特化したデジタルマーケティング」の3つだとよく言われますが、トレンドを即座に商品に反映できる体制は、デザイナーを大量に抱え広州でサプライチェーンを築き上げることで実現しました。

     

    中国では商品を売っていない

    2010年代後半も高速成長を続けていたSHEINは、実店舗が休業し人々がオンラインで服を買い始めたコロナ禍を追い風に、2020年から「爆発的な」成長期に入ります。2021年5月には米国でのショッピングアプリ分野でのダウンロード数がアマゾンを抜いて首位に立ち、ターゲット層の若い女性以外にもその名が知られることとなりました。

     

    知名度の急上昇によって、SHEINのプロファイルにも関心が寄せられるようになり、中国で設立されたことや広州市にサプライチェーンを集約しているビジネスモデルも報道されりょうになりました。

     

    ただ、SHEINは創業時から「中国の商品を海外に売る」越境ECに軸を置いていたため、中国では商品を販売していません。先進国には「メイドインチャイナ」に対してネガティブな印象を持つ人も少なくなく、実際SHEINには品質やデザイン盗用に対する批判も寄せられています。

     

    SHEINは数年前から上場も取りざたされていますが、上場先として有力視される米国は中国企業への規制を強めており、スムーズにいかない可能性もあります。

    これらの点を考慮してか、SHEINは昨年終わりから今年初めにかけて運営会社の所在地をシンガポールに移転しました。

     

    今後もSHEINは中国色を極力出さずにグローバルブランドとして事業を展開していくことが予想されます。とは言え、同社の競争力の源泉は広州市のサプライチェーンを存分に活用していることにあり、本社をシンガポールに移したとは言っても、事業のコア部分は中国に存在していると考えられます。

     

    上場前ということもあり企業情報を積極的に公開しておらず謎も多い同社ですが、異色の企業の今後が注目されます。

     

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