【中国よもやま話】コロナ禍でも中国消費者の「爆買い」は続いている 日本からの越境EC購入額は約2兆円に

2021.8.24
  • 東京ではオリンピックに続き、パラリンピックが開幕しました。アスリートたちの活躍は、世界中の人々を元気づけてくれますが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために仕方ないとはいえ、外国人観光客の入国は早々に見送られ、「空前のインバウンド商戦」も消えました。

     

    しかし、制限の多い大会にあっても、選手や外国人記者は、日本の魅力をSNSで発信しています。特にカナダのテレビ局CBCのデビン・ホロー記者は、「セブンイレブンへの愛」を爆発させた投稿で、注目を集めています。

     

    「アイスコーヒーの品揃えはこの世のものとは思えない」

    「たまごサンドはこれまで食べた中で最高」

    他にも枝豆チップス、ベイクドチーズケーキ、唐揚げ串……ホロー記者の描写と画像に食欲をそそられ、「日本に行くことがあれば、自分も買いたい」と思った人もたくさんいたようです。もし、このツイートやTikTokの動画を見た世界中の人が、簡単にその商品を購入できるような仕組みがあれば、どれだけ売れることでしょう。アイスコーヒーや熱々の唐揚げは難しくても、SNSで目にした商品を、探し回ることなくワンクリックで購入できれば、消費者と生産者の双方にとってメリットが大きいでしょう。

     

     

    コロナ禍で急成長したライブコマース

    実は中国では、「ライブコマース」と呼ばれる動画を見てほしいと思ったものを、そのまま購入できる仕組みが、既に普及しています。きっかけはコロナ禍の巣ごもり消費です。

     

    日本も2020年春の1回目の緊急事態宣言で、商業施設の多くが休業し、飲食店も時短営業となった結果、都市部でウーバーイーツの配達員をよく見かけるようになりました。中国は日本よりも数年早く、出前アプリ、キャッシュレス決済が普及し、動画配信とECを結び付けるライブコマース市場も立ち上がっていました。だからこそ、2020年初めの感染拡大期に日本以上に厳しい外出制限・営業制限が敷かれたときも、国民生活にそれほど混乱が生じませんでした。

     

    小さな都市であってもECやネットスーパーで野菜や日用品の宅配が可能で、出前アプリも浸透していたため、家にこもりっぱなしでも生活必需品は調達できたそうです。

     

    そしてライブコマースは、営業制限や移動の制限で「売り場」を失ってしまった生産者や企業によって、頼みの綱になりました。コロナ前のライブコマースのイメージは、若いKOL(キー・オピニオン・リーダー)が化粧品やアパレルを売りまくる、というものでしたが、コロナ禍では農家がフードロスを防ぐためにライブコマースで生鮮野菜を売ったり、経営者が自らライブコマースで自社商品を販売しました。アリババなどIT企業がライブコマースのアプリを提供していたから、オフラインの売り場を失った人々が一気にライブコマースに切り替え、ジャパネットたかたのようになれたのです。

     

    また、家に閉じこもっていた消費者にとっては、ライブコマースは娯楽であり商品を調達するチャネルでもありました。

     

     

    海外旅行できない消費者のニーズに対応

    ライブコマースは、成長を続ける越境ECにおいても重要なチャネルになっています。

     

    中国人旅行客による「爆買い」が日本で注目されたのは2015年。中国政府はその頃から越境EC市場の拡大に向け法整備などを進めてきました。そして2020年春、中国でコロナ禍が収束し、経済活動が正常化すると、海外旅行に行けない人々の消費意欲が、「中国のハワイ」と呼ばれる海南島の免税店での買い物や、越境ECに向かいました。

    日本の企業や個人も、中国人の日本ブランドニーズに対応すべく、ライブコマースでの情報提供や商品販売を強化しています。配信者は個人やお店、企業と幅広く、ユニークな例では、東京都心の高級マンションのライブコマース(即決を目指しているというより、日本に来られない顧客とのつながりの維持という目的が大きかったようです)、マグロの解体ショーライブコマース(さすがに配送先は日本国内限定でした)などもありました。

     

    経済産業省が7月30日に発表した「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆9499億円で、前年から17.8%増加しました。※図表1〜3は同レポートより引用

     

    急成長する越境ECを支えるため、国際物流網の増強も急務となっています。順豊国際の⽇本法⼈「順豊エクスプレス株式会社(SFインターナショナル・ジャパン)」の中国への2020年の越境ECの取扱額は、2019年⽐で5割増えました。貨物輸送量の増加を受け、SFインターナショナル・ジャパンは年内に⽇中の貨物便を現⾏の4路線から6路線に増やす予定です。

     

    ワクチンの接種が進んでいるとは言え、コロナ禍の収束はなお見えず、半年後に冬季五輪の開催を控える中国は、厳格な渡航制限を当面維持すると見られています。このような状況の中、越境EC市場は拡大が続くでしょう。そして3年後のパリ五輪では、選手や記者がSNSでお勧めしたものが、ワンクリックで家に届けてもらう世界が実現しているかもしれません。SFインターナショナル・ジャパンは越境ECに関わる全てのお客様の利便性を高めるために、今後も努力していきます。

     

     

おすすめの最新ニュース

全て見る> >